ロボットの「リモート旅行」

N社の新しいサービスは、「リモート旅行」。健康面などで旅行に行けない人のため、代行ロボットが旅の風景を映し出し、依頼客は自宅の画面で疑似体験できる。

都会に住むT氏は、故郷の海の崖で、秋の夕陽を見るリモート旅行を契約した。

指定日に自宅の画面の前で、代行ロボが送信する、電車・バスを乗り継ぎ海を目指す旅の映像を見る。とても楽しい！

時は夕方。いよいよ海辺の夕陽が見られるとT氏は喜んだ。ロボは崖を目指して進む。

ところが！何という事。昨日の雨で地盤が緩み、崖の先端が立入禁止なのだ!!
崖への道の両側は松林で、道の脇からは海は見えない。

T氏があきらめかけた時、画面が動いた。ロボが松の木を登っている。
そして、大空と夕陽と眼下の海が映った。夕陽がアップになり、続いて海面が近付き、画面は真暗に。

目的を遂行し、旅行代金を得たN社。しかし同時に、代行ロボの莫大な修理費を払うことになった。