白紙の手帳

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有名作家だった祖父が死んだとき、古い手帳を託された。
そのとき俺は大きな期待をした。
作家志望としてなかなか芽がでなかった俺に対する救済だと思ったのだ。
祖父が書きためていたアイデアがあるかもしれない、と。
しかし手帳を開くと、すべてのページは白紙で何も書かれていなかった。
そんなはずはないと信じられなかった。
何も書かれていないなら、なぜわざわざ手帳を?
俺はメッセージが隠されているのではないかと人生をかけて探った。
ページのどこかに小さな文字が隠されているのでは?
透明なインクが使われているのでは?
このノート自体がヒントなのでは?
しかし、結局メッセージは発見できず作家にもなれなかった。
もしあのとき、自分で物語を作り出そうと必死になっていたらどうなっていただろうか。
俺は死に瀕した病床で静かに思いをめぐらせた。
公開:20/07/12 21:12

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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