冷たく、温かい

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私は事故物件と呼ばれる家で生まれ育った。
両親は家賃が安いからという理由でこの家を借り、何か問題があれば全て幽霊のせいに出来ると私の育児を放棄した。
空腹に泣いても、痛みに苦しんでも、おむつの交換を叫んでも全ては無視される。
「あの声は幽霊のものだ!」事故物件だからと皆が言う。
私は生まれて間もなく、愛も知らずに死んでゆく…そう思っていた。
髪の長い女性の霊が私のオムツを交換し、ミルクを与えてくれた。
子供達の霊が私をあやしてくれた。
危ない物に近寄ろうとすると怖い男性の霊が助けてくれた。
親は無くとも子は育つとよく言ったものだ。私はこの家に住む霊によって育てられた。
幽霊の手は冷たい。死者故にそこに温もりは求められない。
しかし温度を持つ人の手の冷たさを知る私は幽霊の温度のない手の温もりを知っている。
そんな私は今日も冷たい人の世界で生きる。
いつかはあの温かな幽霊になりたいと私も願う。
ホラー
公開:20/07/12 19:21

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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