肥溜めドボン

私の小学校は家の近くだが、中学は徒歩で40分以上の遠方だった。市街地を外れ辺鄙な所に中学が新設された為、通学路の
左右は田んぼと畑で、あぜ道の各所には肥溜めが在った。
肥溜めは、昔からの農業設備で農家他で出た屎尿を、下肥という堆肥にする為の貯蔵用瓶だ。それは素焼き製が多く、
口径1-1.5m程度の物を土中に穴を掘り埋め込み使用する。ある時通学道中の長さに飽きた生徒達が、友達と畑に入り込み追いかけっこをし逃げるのに夢中で、あぜ道を踏み外し生徒が肥溜めに落ち込んでしまった。その後の姿は想像を絶するものだが、家に泣きながら帰るしかなかった。

後日彼が改名したと聞いた。何故なら肥溜めに落ちるという事は、一度死んだという事になるらしい。地に穿たれた穴は冥界への入口でありそこへ落ちれば、その魂は黄泉国のものとなる。

前の名前のままなら、黄泉国の厄が降り掛かるから先ず厄を落とす為に改名が必要だった。