霧の森

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 前だけを見て走った。
 荒野を切り開き、誰もがより安全に通れるように道を作りながら、休むこともせず、つき進んだ。
 ある日、私は倒れた。もうこれまでの道は歩けない。
 私は履いていた靴を脱ぎ、本能のままに別の道を裸足で歩くことにした。
 裸足は痛みも温もりも直接、全身に伝わる。これが歩くという感覚なのだな。
 私は春の和らかさも、夏の力も、秋の切なさも、冬の強さも忘れてしまっていた事に気付いた。
 感覚を取り戻しながら光の届かぬ深い森を歩いた。
 すると、見たこともない霧に包まれた。裸足の脚は泥濘にとられ進むことができない。力を込めても、進む方角があっているのかも解らない。風は常に向い風だ。
 その時、光を遮っていると思われた森の木々が語りかけてきた。
「なにを見に来たのだ」
 我に返った。
 私は霧を見ていた。そして闇や泥濘を見ていた。遮るものばかりを。
 私はまた光を見て歩き始めた。
青春
公開:20/07/11 20:06
更新:20/07/11 23:57

NORIHISA( 碧の星 )

   創作活動はこちらのショートショートガーデンが初めてです。令和元年12月31日から投稿開始しております。
 勉強になりますので、どのようなことでもお気軽にコメントいただけると嬉しいです。厳しいご意見もお待ちしております。
 どうかよろしくお願いいたします。

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