河童不動産①

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「橋じじ・・・・・・道祖神さま、如何致しましたか?」
河童の川太郎がカウンターに歩み寄る。
「いやね、希望通りの立地で日当たりも申し分ないんだけどね」
大抵の神は前置きの後でとんでもないことを言う。
「何でございましょう」
「子は宝だ。それは分かってる。だが、うちの裏の狭い川原で運動会や水泳の練習をやらなくてもいいと思うんだ。水神さまの水神川や近くに運動場もあるだろう」
「はあ、子供達の声がうるさいと。お引っ越しをご希望ということでしょうか?」
「いやいや、大人が誘導をうまくやれば子供達も広い場所で出来ると思うんだ」
「はあ、それでしたら実行委員会に連絡してみますけど」
「いや、うん、だからあ!」

シルバー人材派遣のゼッケンを付けた道祖神やボランティアの稲荷狐たちが黄色い旗を持って子供達を並ばせる。河童や狐狸の子供達は一列になり嬉しそうに歩いて行った。
その他
公開:20/07/11 17:59

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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