不眠の代償

2
4

…羊が四十八匹、羊が四十九匹、羊が五十匹…。

眠れない夜に羊を数えるというのは、イギリスから伝わったらしい。
sheepとsleep。
ダジャレで眠気を誘発できるとは思わないが、眠れずに焦っていた僕は羊を数えていた。

…羊が百二十一、羊が百二十二、羊が百二十三…。

匹を付けるのも面倒。ここまでくると数字を追う事に必死になりすぎてどんどん頭が冴えてくる。
三百匹になったらやめると決めると、数字は増えているのにカウントダウンのワクワク感が否めず、長距離走者のような疲労と達成感で気持ちよく眠る事ができた。


翌日、僕のもとへ弁護士が訪ねてきた。
「あなた、昨晩羊を数えましたよね。三百匹。費用を払ってくださいと訴えられています」
「費用?」
「労働賃金ですよ。まさか、羊には必要ないとでも?」
僕は羊三百匹分の牧草代を支払うと、眠る時間もなく労働に勤しみ、不眠とは無縁の生活を送っている。
ファンタジー
公開:20/07/12 09:59

森川 雨

ショートショートには不向きな書き方かもしれませんが、こちらで修行させていただきたくお邪魔しました。

よろしくお願いします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容