雲ヒツジ(つづき)

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しばらくのあいだ、のんびり雲ヒツジたちと空中遊泳を楽しんでいると雲行きが怪しくなってきた。
次第に空は暗くなり、向こうから漆黒の分厚い雲が現れた。
急にお父さんの顔が青ざめた。
「まずい。雲ヒツジたちを見つけて、雲オオカミの群れがやって来たぞ! 早く逃げないと襲われるよ」
私とお母さんもお父さんの言葉に気が動転し、あわてふためいた。
その様子を横目に、一匹の黒い雲ヒツジが「メェェ!」と鳴いた。
すると、一緒に空を泳いでいた他の白い雲ヒツジたちが黒い雲ヒツジの周りに集まって何かの形になろうとしていた。黒い雲ヒツジは目のようだ。
それを見た私は、小学校の図書館で読んだ絵本、『スイミー』のことを思い出した。
瞬く間に雲ヒツジたちは巨大な雲ヒツジとなった。
こちらに近づいてきた雲オオカミの群れは、そそくさとその場を立ち去った。
「ありがとう」
勇敢な雲ヒツジたちに助けられた私は感謝の言葉を伝えた。
ファンタジー
公開:20/07/12 07:29
『とってもふしぎな創作ドリル』 「ストーリー05 雲ヒツジ」 ヒツジ 空中遊泳 オオカミ 図書館 絵本 『スイミー』

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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