トライバル

4
4

 茫漠な土地に風力発電機が何基か傾いて突き刺さっている。1000年前の遺跡だ。結局滅びた文明。いまこの星にはDNA的に前と違う人種が住んでいる。先の文明では人間は100億人はいたらしい。いまは……何人だろう。詳しく統計をとる政府ももはや機能していない。

 海は完全に凪いでいる。生命のいない海。白くて細い夕暮れの月が空に浮かんでいる。富裕層は月の内側のコロニーに移住したらしい。私達のような日々躰を売って糊口を凌いでいるものとはかけ離れた暮らしなんだろう。でも私はこういう生活が決して嫌いではない。束の間だけでも求められる、そんな気がするから。

 星が細やかに瞬いている。何かを思い出したくて海に来たんだった。時間とは錯覚で過去も現在も未来も同時に並行して存在する。交錯するパラレルワールド。いつか寝た男が呟いていた言葉。名前も知らない。顔も忘れた。腕に彫られたトライバルの刺青だけ覚えてる。
その他
公開:20/07/12 00:39
更新:20/07/12 01:03

千億アルマ( Tokyo, Japan )

Senoku ALMA
https://note.com/shiro_mid

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容