ネズミと望遠鏡

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巣穴に入る直前痛みが走る。尻尾の先がちぎられていた。
「情けないなあ」
壁の向こうでダミ声が言う。
「…すみません」
「頼むよ。腐っても猫だろ?」
ダミ声が餌にありつけずイライラしながら遠ざかると、気弱な猫は穴に鼻先を入れた。
「ごめん。痛かったよね」
「大丈夫。君の辛さに比べればこんなもの。それより準備はいいかい?」
「う…うん」
気弱な猫は緊張気味にダミ声を呼んだ。
「大変です! 来てください!」
ダミ声は気怠そうに歩いてくる。
「なんだよ」
「ここ、覗いてください」
ダミ声は背中を反り、尻を上げた格好で中を覗くとバネのように飛んだ。

ふぎゃっ!

ダミ声の覗いた穴には望遠鏡が設置され、レンズの向こう側には威嚇する巨体なネズミの顔があった。
ダミ声が姿を見せなくなって三日、ネズミは「じゃあ、お元気で」と望遠鏡を担いで次の街へ行く。
望遠鏡には『猫退治承ります』と書かれていた。
ファンタジー
公開:20/07/10 15:19
更新:20/07/11 07:22

森川 雨

ショートショートには不向きな書き方かもしれませんが、こちらで修行させていただきたくお邪魔しました。

よろしくお願いします。

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