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俺は苛ついて裏通りにあるバケツを蹴飛ばした。
「キャウン」とビショ濡れになった野良犬が逃げていった。
「チッ。犬かよっ!」
転がったバケツの水たまりに何か影が蠢いた。水面には今日、俺と上司が言いあった場面が映し出されてそして暗転。闇に観覧車が浮かびあがる。
俺はいつの間にかその観覧車に乗っていた。ゴンドラから見慣れた都会の夜景が見える。振り向くと観覧車より巨大な大仏が睨んでいた。
「ぎゃーっ」
俺はそのまんま奈落へ堕ちていった。
気づくと俺は元の裏通りにいたが、いきなりバッシャーンと水をかけられた。
「何するんだようっ!」
「何って、お前自身がやったことだろう?」
見上げるともう一人、俺がいた。
「お前は誰だ?」
「俺は俺だよ」
もう一人の俺が答えた。
じゃあ俺は一体誰なんだ?
我が身を振り返った。妙に毛深くなっている。
水たまりの中を覗き込む。
ビショ濡れの野良犬が映っていた。
その他
公開:20/07/09 21:21
schoo 異空間バケツ 手のひら観覧車

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