夏へのお引越し

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「なつにおひっこししたいの!」
 クリスマスを目前に控えたある日。4才の娘が真剣な顔で訴えてきた。

 12月の頭、我が家は新しい住まいに引越した。娘の幼稚園から遠くならないよう、近場での引越しだったが、それでも4才の娘には大きなインパクトがあったようだ。「おひっこし」は、娘のマイブームだった。

「どこにお引越ししたいの?」
「なつにおひっこしするの!ふゆはさむいからイヤなの!」
 どうやら娘は、寒い冬を抜け出して、今すぐ夏へと「おひっこし」したいらしい。

「さすがにそれは……」
 無理だよ、と言いかけたところに妻がやってきた。
「あら、良いじゃない。お正月にお引越ししましょうよ」


 正月。僕らはオーストラリアの真夏のビーチにいた。
「チケットが間に合ってよかったわね」
 アイスティーを飲みながら妻が言った。
「なつにおひっこししたのー!」
 砂浜で娘がはしゃいでいる。
ファンタジー
公開:20/07/10 22:39
更新:20/07/10 23:11

森下慎吾

文章を書くのは楽しいけど、難しい!
読んだ人が楽しんでもらえるよう、がんばります。

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