河童不動産ーエピソード0

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「老朽化か」
ぼろ布をまとった姿の老人が、横断歩道橋の階段にへたりと座り込んだ。
「とうとう、撤去だそうですね。お疲れさまでした」
労るように河童が話しかけてきた。
「このあたりは田舎だから住みやすくてね、見逃してくれないかね」
「子供が遊んでいて怪我でもしたら大変ですからね。代わりに横断歩道が整備されます」
「世代交代、か」
「大丈夫ですよ、再雇用制度も充実してますからね。私たちも手伝います」
「祠はどうなる?」
「ーー新居も用意しますから」
「分かったよ、ごねてすまなかったね」
「ーー塞ノ神を袖にするんですからね、最後くらい好きにしたらいかがですか?」
「ふ、そうだな」
横断歩道橋の撤去工事が始まり、階段を登りに来た幼児がそれを見て大泣きした。困り果てた母親が天を仰いだ時、小さな彩雲を見つけ子供を泣き止ませた。

塞ノ神ーー道の神で悪いものを遮るガードマン
その他
公開:20/07/10 19:28
更新:20/09/14 23:47

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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