コーチ

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もうすぐ秋の体力テストだ。柔軟も懸垂も持久走も自信がある。唯一だめなのが反復横跳び。それさえクリアできれば最優秀選手になれる。

練習をしよう。夜、校庭に線を引く。フォームを確認するために校舎のガラス戸に姿を映す。突然、めまいを感じた。ガラスに映っている自分の姿がブレて見えるのだ。練習のし過ぎか?いや、まだ始めたばかりだ。立ち止まってガラスに映る自分を見直す。

ブレているんじゃない。何かが動いているんだ。

目を凝らしてガラスの向こうを見やると、いつも昼休みにカレーパンを買っている売店の机だった。僕が見ているのに気づくと、机は動きを止めた。もしかして僕の動きに合わせて動いていたのか?

試しに反復横跳びを再開すると、机も動き出す。僕よりわずかに速く。まるで僕をリードするように。僕の練習を助けてくれるかのように。

体力テストの日。僕の頭の中で机が動いていた。
初めて最優秀選手に選ばれた。
青春
公開:20/07/08 21:40
更新:20/07/08 21:59
左右にずれる売店 スクー

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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