文房具レース

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ヒットに恵まれない作家は机に向かいながら文房具レースのラジオ中継を聞いていた。
後がない作家は筆に人生をかける。
「位置について、よーい、ドン!」
熱狂の渦の中、文房具は一斉にスタート。
文房具レースでいちばん人気を誇るのは筆。
なんとしても筆を走らせたい作家やライターが後をたたないという。
走る筆が何に乗るのかも注目すべきポイントだ。
馬に乗るのか、波に乗るのか、調子に乗るのか。
筆の乗り具合でどれだけスラスラ進むかが変わるのだから目が離せない。
「最終コーナーを最初に通過したのは筆だ~!」
筆が調子に乗って走っていると、自然と創作意欲に満ちあふれて言葉を編めるのはほんとうのようだ。
このままラストシーンまでたどり着いたら大作の予感がする。
「おおっと! ゴールテープ手前で筆が倒れてしまい、2着でゴールイン!」
殺風景な部屋からポキッという乾いた音がした。
その他
公開:20/07/08 08:28
更新:20/07/08 15:20

ゆう( 東京都 )

はじめまして。ゆうと申します。ショートショートのおもしろさに惹かれ、不定期に投稿しています。みなさんと交流ができたらうれしいです!

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