真犯人の味

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「…以上の理由で犯人は、あなただ!」
名探偵は自慢の口髭をひと撫でし吉田を指差した。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。何もしていない!何かの間違いだ!」
一同は静まり返る。
「確かに!彼女が殺された3日前の晩。俺は彼女の部屋に会いに行った。でも部屋には先客が居たんだ。顔は帽子とマスクで分からなかったが、背格好は男だった。本当なんだ。信じてくれ!」
吉田の顔は紅潮した。
「何より!これを見てくれ!」
右手の拳を皆に向けた。
「男がいきなり襲いかかって来たんだ。でも取っ組み合いになった際に拳が顔に当たったんだ。拳にこれだけ傷が付くんだから犯人の顔にも何らかの傷が残ってるんじゃないか!?」

静かに名探偵は言った。
「もうよそう。この中に顔に傷のある男性は居ない…」
連行される吉田の後ろ姿。僅かに安堵の空気が流れた。


名探偵は口髭を撫でながら痛み始めた口内炎の味を確かめていた。
ミステリー・推理
公開:20/07/08 00:08

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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