アオイ通信〜エッセイ風

6
8

友人が、葵の花弁をコケコッコー花と呼んでいた。何故なのか分からない。懐かしそうに語る友人の口振りが印象的で、私は葵の花をただただ想いを馳せる。
私にはアレにしか見えない。電話ボックス。交換手が必要不可欠の、年代物の古い受信器。街に張り巡らされた、秘密の暗号。誰かの噂話が、どこかの花弁から漏れいでているかのような不思議な存在。季節的なものにせよ、街や道や家々に咲き誇るアレは、墓所の仕掛けた罠であるかのようだ。
これは不正解だ。私は正解を知らない。調べれば大体わかるはずのこの世の中で、「知らない」と話すことは怠慢のようでなんだか怖い。
死んだ者は天に昇るのか地に還るのかな知らない。知らないことをいいことに、葵の花を受話器に見立て、亡くなった友人に通信を試みた。
「聞こえますか?こちらは2020年の夏です。仕事はまあまあです。あの頃が少し懐かしいです」
勿論花に耳を当てても、何も応答はなかった。
その他
公開:20/07/09 20:05
95%実話

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
a.co/1VIyjHz

『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

こちらで写真を紹介、ハガキにと販売しております!
https://minne.com/@sakoyama0705  - ハンドメイドマーケットminne(ミンネ)

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容