いない いない

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「ママ、顔ないよ」
え、と驚いて娘の顔を見た。三歳になる娘と友人の家に遊びに来ていて、珈琲を飲みながら雑談していたところだった。
「何て言ったの、今」
「顔ないよ」
指した方を見ると消してあるテレビ画面にぼんやり映る娘と私の顔があった。
「ああ、ほんとだね、おばけみたいだね」
「あははは」
娘と友人の娘が笑いながらおばけ、おばけとはしゃいでいる。
「子供って、たまにドキッとするようなこと言うよね」
「この間もね・・・・・・」


「ママいない」
両手で顔を隠した娘が大声で叫んだ。
買い物かごから野菜を袋に詰める手が止まる。
一瞬、まわりの大人たちがこちらを見ている気がしてじわりと汗が出る。
「いない、いない、ばあ、ね」
その他
公開:20/07/09 18:59

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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