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 始まりも終わりもない円形の道路を、彼は夢中で走っていた。いつ走り始めたのか、なぜ走っているのか―思い出せることはなく、何かに追い立てられるように走っていた。
 すると、後方から迫りくる影があった。あれだ、あれが自分をこうも焦らせるのだ。急速に接近する影を捉えた彼はそう悟ると同時に、決して追いつかれてはならないと直感した。しかし、もはや自分に今以上速く走る力が残っているとは思えなかった。
 その時、体が突然軽くなった。全身に力がみなぎり、彼は一層力強く駆けた。逃げ切れるかも知れない―そう思った彼の後ろからは、しかし、あの影が近づいてきていた。最後の奮闘も徒労に終わりつつあることを感じた彼は、半ば自嘲しつつ、この先のあらゆる運命を覚悟した。


 両者の激走を、真上から観察している子供がいた。そして彼は、問題文を見直すと、途中で加速する点Pに点Qが追いつく時刻を求めよという指示に頭を抱えた。
その他
公開:20/07/09 15:47
更新:20/07/10 15:16

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