カブセムシ

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その夏、カフェで旧友と食事をしていると自然とカブセムシの話題が出たんだ。
その虫は、名前も形もカブトムシに似ている。だが僕らは、夏休みになれば林ではなく家の中でカブセムシを捕まえたもんさ。何故なら帽子やブックカバー等、大きさに関わらず“かぶせ”る物になら何にでも擬態する虫だったからだ。
僕なんて、よく雪平鍋でカフェオレを温めたもんさ。そうすれば糖分を求めた奴らが、鍋蓋に擬態しようと近寄ってくるからだ。ま、これは甘党の僕が飲みたかったからでもあるんだけど…。おかげで今でも歯医者通いの毎日さ…。
そうやって、話が盛り上がったとこで、注文していたホットケーキが運ばれてきたんだ。腹を空かせていた僕は、蜂蜜をタップリとかけてから頬張ろうとした。だがその時、口から何かが落ちたんだ。
それは恐らく、寝てる間に入り込んだのだろう…。治療した歯の被せ物に擬態してた虫が、蜜の香りに誘われてポトリと落ちたのだ。
ファンタジー
公開:20/07/05 23:39

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