Ⅰ.013 壁にめり込んだ男~追求~

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「嘘って、一体どういうことですか?」
 羊亜種の従業員は明らかに狼狽していた。苦みのある刺激臭が漂う。
「まず、被害者と女性は昨晩来たというが…」
「そこから嘘なのか?」とデニさん。
「半分な。来たのは被害者一人だけだ」
「な、何を根拠に…」
「うちの相棒」
「わん」
 わたしは先程、現場に入室した時点で、残存する情報の精査も済ませていた。それに関する結論は既に主人に伝達済みだ。
「相棒が言うには、一晩泊まったにしては、女性客の気配が驚く程希薄だったようで。おそらく、女性が来たのは事件発生の直前」
「言うにはって、犬でしょう…」
「それと、あんたの被害者の関係だけど」
 当然の疑問を口走る従業員を黙らせ、主人は続ける。
「面識ないような口振りだったが、それも嘘だ」
「そ、それも何を根拠に…」
「それもうちの相棒」
「わん」
 従業員は再び何か言いたげだったが、それを許す主人ではなかった。
ファンタジー
公開:20/07/07 21:33
ファンタジー 連載 怪盗 探偵

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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