海みたいな空

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 俺と美晴は、田んぼの縁に座ってラムネを飲んでいた。
「ねえ見て、啓太!」
 美晴が大きな声で叫ぶと空を指さした。
 つられて俺も空を見上げる。
「えっ?」
 俺はびっくりして何度も瞬きをした。
「空に、海がある……?」
 美晴は立ち上がると道の真ん中に立つ。
「すごーい!キレイ!」
 俺たちが見上げた空には魚が泳いでいた。それだけじゃない。珊瑚、イソギンチャク、ヒトデとかもいて、まんま海の中だった。
 いろんな色の魚達が青空の雲に透けて気持ちよさそうに泳ぎ回っている。海みたいな空からは潮の香りがした。
「すげえ!」
 美晴が隣に来て、俺の手をぎゅっと握った。
「神様が空に、海の水をこぼしちゃったのかな?」
 魚たちは地平線に向かって泳いで、やがていなくなった。空は元に戻り、一斉にセミが鳴きだした。
 渓流釣りに行ったはずのじいちゃんが帰ってきて「ほらよ」と俺に魚を投げた。海の魚だった。
ファンタジー
公開:20/07/07 12:51

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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