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「いろあめはいらんかね~」
鬱陶しい梅雨の季節に威勢のいい屋台の声が聞こえてきた。
近寄ってみると、カラフルな虹色の飴ではなく『色雨』と幟旗に書かれていた。
「そこのお嬢さん、雨には、季節によっていろんな色があるのを知っているかい。
例えば、紅雨は春に咲いた花々に降り注ぐ雨、青雨は青々とした若葉に降り注ぐ雨、白雨は雨脚が激しく白い夕立や明るい空から突然降る俄雨、黒雨は空を真っ暗にするような大雨のことさ。これらの雨を総称して色雨と呼ぶ」
「へぇー、知らなかったわ。ところで、お勧めの色雨は何ですか?」
「翠(緑)雨さ。新緑のころ草木に降り注ぐ恵みの雨とされている。黒髪に降る雨を指すこともあり、黒々としたつやのある美しい髪を、緑の黒髪と表現することと関係があるらしい。なんとも妖艶で風情があって趣深いね」
「それじゃあ、翠雨をください」
すると、急に雨が降り出して私の長い黒髪をしっとりと濡らした。
その他
公開:20/07/04 21:00
梅雨 屋台 色飴 紅雨 青雨 白雨 黒雨 翠雨 緑雨 黒髪

山田衆三( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育ち、大学時代は京都(御所の近く)、大学院時代は湘南(海ではなく山側)で過ごす。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年06月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。

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