祭り博物館

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入口のロボットたちは、よさいこ踊りを踊っていた。壁側のロボットはソーラン節を。さらに向こう側のロボットは阿波踊りの音楽に合わせて練り歩き続けている。
「新型コロナがすべてを変えてしまいました」
祭り博物館の館長は寂しそうにつぶやいた。祭りは3密の最もたるもの。ありとあらゆる祭りが中止となり、気が付いたら伝統が途絶えてしまった。
いまは人類の文化遺産を継ぐのは、ロボットたちだけだ。
小型ロボットたちが、ところ狭しと山車を引きまわす。岸和田だんじり祭りのグループだ。巨大な柱を坂から落とすロボットも、熱湯を掛け合うロボットもいる。
だが、しょせん動きをまねた偽物にすぎない。ロボットでは祭り独特の熱気を再現できない。
だだ、そんなものは、もう関係がないのだ。館長の名札を付けたロボットは、人類そのものが死に絶えた世界の中で、ひときわ長い嘆息を吐いた。
SF
公開:20/07/04 13:03

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