特注金庫

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 資産家の屋敷。
「さあ、中に入れ」
 父親が息子にナイフで脅され金庫の前に立った。
 この金庫、人が歩いて入れるほどの大きさがある。

 父親は最近、放蕩を続け言うことを聞かない息子に愛想を尽かし、
「家は継がせない。会社や資産は他の者に任せる。おまえの生活は保障してやる。それがせめてもの私の心だと思ってくれ」
 そう言って引導を渡した。以来この息子は「皆にこのことが宣言され、遺言などが書き換えられる前に父親の命を」と狙っていた。
「いつも一人で金庫室で仕事をする父親は誤って金庫に閉じ込められ、哀れに……」そう言いながら息子は、くっくと笑った。
「じゃあな。おやじ」
 父親は追い立てられ金庫室に入り重い扉が閉じられる。
 ニヤける息子。
 すると「プシュ」っと音がした。金庫室の前の部屋は自動施錠され通風も切れた。逆に金庫室内は安全が確保されていた。
閉じ込められたのは息子の方だった。
その他
公開:20/07/04 10:45

N(えぬ)( 横浜市 )

読んでいただきありがとうございます。(・ω・)/
ここに投稿する以外にも、自分のブログに同時掲載しているときがあります。

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