ファンタジーの価格

玄関で傘を開くと、百円玉が転がり落ちた。それをポケットに入れて家を出る。
スーパーで買い物を終わらせて、傘を開くと、また百円玉が転がり落ちてきた。
さっきの百円玉は、ちゃんとズボンのポケットに入っている。
どういうことだ？
僕はすぐに傘を開いたり閉じたりしてみるけれど、百円玉は落ちてこない。
家に帰って一息ついて、しばらくしてから傘を開いてみたら、百円玉が転がり落ちた。
僕は考えた。最初に百円玉が転がり落ちてから、次に傘を開くまで約一時間。
何回かテストしてみたけれど間違いない。
これは一時間ごとに百円を産出する魔法の傘なのだ。
魔法使いの忘れ物か？
この前、病院に行った時に間違えて持って帰って来たのかも知れない。
とにもかくにもファンタジーだ！
僕は興奮して、この事実を妻に伝えた。
すると妻は首を傾げて言った。
「それって、時給百円しか稼げない傘ってことよね？どこにファンタジーが？」