音竹君のメガネ

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 私が好きな音竹君は、優しくて穏やかで女子の癒し的存在だ。
 放課後、ハッと気づくと私は教室で寝ていた。夕暮れ時の太陽は、教室のいたる所に影を作り出している。
「あ、やっと起きた」
 不意に声が降ってきてビックリした。いつもの黒縁メガネにまっすぐな黒い髪。……音竹君だ。胸が騒ぎだす。
「よく寝てたから起こそうかどうか迷ってた」
「そ、そうなんだ。ありがとね」
 緊張しすぎて声が震える。
「音竹君って、好きな人いるの?」
 ずっと聞いてみたかったことだ。
「突然だね。……いるよ」
 私は音竹君のメガネを奪い取ると、教室の床に投げ捨てた。まるで駄々をこねる子供。後悔しても遅い。
「これで今、音竹君は私しか見えない」
「そうだね。近くで顔を見てもいい?」
 音竹君が私の顔を覗き込んだ。
 顔が、耳が、熱い。音竹君はふっと微笑む。
「こんなに近くで梅沢さんの顔が見れた。メガネなんてない方がいいな」
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公開:20/07/05 20:02

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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