雲のパン屋

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 誰もが足を踏み入れそうにない、山の頂付近に、行列をつくるパン屋がある。
 客は口々に「こんなパンは食べたことがない。」と顔をホクホクさせる。
 この店のパンは、店主が長い綱を使って空の雲を捕まえて、生地に練り込んでいるのだ。
 夏の青空に浮かぶ入道雲は、サックリふわふわで陽の光の香りがする。
 今にも降り出しそうな雨雲は、しっとりして味わい深い。
 その日の天候によって焼き上がるパンが違うので、それもまた楽しみとなっているのだ。
 午後になると、雷雲が近づいてきてゴロゴロ鳴り出した。
 「雷様がお腹を空かせているわ。」
奥さんが店主に何かをうながすと店主は、七色に光るパンを取り出し、網に乗せて差し出した。にゅーっと雷様の手が伸びてパンを食べる。
 「彩雲のパンで、お願いします。」
 店主が言うと雷様は雨の後、大きな虹の橋をかけてくれた。
 店主は虹を渡り、星雲を取りに網を宇宙に伸ばした。
ファンタジー
公開:20/07/03 17:03

ゆらら風

ショートショートは時間を気にせず、読めるのがいいですね。情熱大陸を観て、書いてみたらはまりました。ワクワク、ほっこり、??な素敵なお話を書けたらいいな。
 突然のフォローすみません。まだまだな私の文章をフォローしていただいて、ありがとうございます。
 へこたれず、素敵な世界を創れるよう精進あるのみです。ᕦ(ò_óˇ)ᕤ

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