ことばの砂

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ここの空は広い。眩しい雲。潮のにおい。海は眠っている。この浜辺ではことばの砂が見つかる。少し硬くてきらりと光る、長い角の金平糖のような砂である。白い砂浜に見つけるのは容易ではないが、慣れるとずいぶんと拾える。
拾ったら小瓶に入れて持って帰り、静かな部屋で海水に浸すとぷつぷつと音がする。それはことばであり、音というより声である。乾燥して海水に浸すとまた聞けるが、何度も聞くと消耗して普通の砂になる。
角の形状の変化から、ひらかなと漢字の砂に分けられる。分類済みの砂を売ることばの砂屋がある。砂屋さんの砂や拾った砂を使って文章ができる。砂屋では砂を文字データに変換する器具も売る。砂をテキストに変換できる。それで文章を作る者もいる。私もその一人であり、この文章も砂で書いている。変換器ではことばが安定せず、波に流されるように崩れるのも一興である。だらか、まま、せず、えら、ららら。。
その他
公開:20/07/03 16:42

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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