図書館トイレ

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 ある飲食店で食事をした時、ふと便意を感じ、トイレに向かった。
 落ち着きのある木造のトイレで、ウォシュレットもついている。
 便器に腰を下ろし用を足す。ふと左の棚に目をやると、いくつか文庫の小説が並んでいるのが見えた。星新一といった有名な著書もあるものの、ほとんど知らない作家の本だ。
「ご主人、本が好きなのかな?」
 と思いながら一冊手に取ってみる。それほど興味が持てる内容のものではないが、やはり紙の本とはいいものだ。
 時間が経つのを忘れてしまいそうだったので、数ページ読んだところで出ることにした。

 会計の時、トイレの小説について店主に話を聞いた。
「結構小説家志望の人が多くて、長居する人が多いんですよ。それで、書籍化した作家さんが、トイレに自分の著書を置いていくことがあるんです。なので私が準備した物ではないのです」
 なるほど、そういうことかと納得し、私は店を後にした。
その他
公開:20/07/03 14:40

フィーカス

短編掌編をよく書いています。
時々何かに入賞したりします(2回)。
わけのわからない世界観を生み出したいです。

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