風の絵

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ちょっと不思議な少年が、不思議な絵を描いた。

キャンバスは真っ白のまま。タイトルは、風。

少年が絵筆を直接キャンバスにつけることはなかった。少し浮かせて思いのままに走らせる。すると絵筆が空気を波立たせ、紙の上に風が吹いているように感じた。だから、風。

美術の先生やクラスメートには理解されなかった。「うまく描けたと思ったのに、なぜだろう?」。少年は穴が開くほど風の絵を見つめて考えた。

すると本当に穴が開いた。その穴から強風が舞い、少年は吸い込まれた。

向こう側には広い空が広がっていて、たくさんの絵描きがその空を見上げつつ筆で風を起こしていた。そよ風、木枯らし、つむじ風。みんな、キャンバスは真っ白。でも、それぞれの絵にそれぞれの味わいがあった。

これでいいんだ。自分らしく、ありのままで。

少年はほっとした。やがて異能派アーティストとして大成功を収めることになる。
その他
公開:20/07/02 18:34

ふみなか( 東京 )

40代半ばの会社員。家族は妻、中3息子、小6娘。つらつらと文章をつづるのが好きです。読んでいただけたら嬉しいです。

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