食用本

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 食べられる本が発売された。
 本の分厚さや内容によって味が違う。最大の利点は、食べると胃で内容が消化され、脳に記憶として残ることだ。
「おいしい! おいしい!」
 他の食べ物と同じく完全には消化されないため、内容すべてを覚えられるというわけではない。が、それでも魅力的なことにはかわりない。
「うまい、なんていい本なんだ」
 旨いが中身のないジャンクブックや、苦くて食べ辛いがためになる良薬な本、分厚くて胃もたれするけど役に立つ哲学書など、様々な食用本が売り出されている。
「何時間も食べても飽きない!」
 しかし、一つ問題があった。
 寝食を忘れて読みふけるという表現があるように、人は運命の一冊と出会うと無我夢中で本を食べ続ける。
 だが、本はあくまで本であり、腹は膨れても人体を構成する栄養にはなりえない。
「あれ……急に暗く……」
 そのため年間に数人、本の食べ過ぎで餓死する人がいるのだ。
SF
公開:20/07/03 21:54

ゆぅる( 東京 )

お立ち寄りありがとうございます。ショートショート初心者です。
拙いなりに文章の面白さを追求していきたいと思って日々研究しています。
よろしくお願いします!

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