ナンヨウハギの黄昏

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友達の部屋に見慣れない水槽があった。
「魚飼ってる?」
「ツイ最近。ナンヨウハギって名前」
漢字では南洋剥。アニメ映画にもなった熱帯魚だ。青地に黒い模様と、鮮やかな黄色のひれが目を引く。案外ミーハーだと思いながら水槽を覗く。
「…うわっ、眩しい!」
水槽の魚が光った。青地に混じる金のうろことひれ。電灯の反射じゃなく、自分から発光している。
「南の太陽で、南陽ハギ。うろことひれは太陽のかけらで出来てるんだ。綺麗だろ」
カーテンを閉めているのに、部屋が明るいと思った。目が慣れてくると、海中から眺める陽射しに感じた。水を泳ぐ太陽。揺らめく光が幻想的で温かで綺麗だ。
「確かに綺麗だけど、ちょっと生臭いぞ。換気くらいしろ」
「あ、馬鹿よせっ!」
カーテンを引いた瞬間、水槽が強烈に発光、水が蒸発した。
「駄目だって、夕方なんだから」
こんがり焼けた南陽ハギから煙が上る。
「こいつ☠あるから食えないぞ」
ファンタジー
公開:20/07/03 21:27
更新:20/07/04 01:10
むうさんリクエスト(?) ナンヨウハギ 半分は昼間見た ウマヅラハギのわっぱ煮のせい…

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

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