8
2

兄ちゃんなんて大嫌いだ!
僕は泣きながら可笑し屋さんに走った。
おばちゃんに「姉玉一つください」って大声で叫んだ。
おばちゃんは飴細工の女性像を僕の前に持ってきた。

「お姉ちゃん」
口にすると姉玉は「どうしたの?またお兄ちゃんに意地悪されたの?」と言って僕を甘えさせてくれる。

「お姉ちゃん」
口にする度、姉玉は僕にべたべたしてくる。

「お姉ちゃっ…」
噛んでしまったが最後、姉玉はパキッと音を立てて砕けてしまった。
噛んでしまった口の中に痛みが生じた。でもそれ以上に心が痛む。

「お姉ちゃん」
返事はない。おばちゃんは砕け散った姉玉の欠片を集めると熱を加えて再び練り始めた。

姉玉は幼少期の僕の心の支えだった。その素晴らしさを知ってもらいたい。
だから婚約者にも姉玉を紹介した。
彼女は姉玉を前に長考し、僕に聞いてきた。
「義姉さん…いえ、職人の技が光るから技姉さんって呼ぶべきかしら?」
ファンタジー
公開:20/07/03 19:07

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容