ポイ捨てしたもの

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「ねえ君、これ落としたよ」

振り返ると満面の笑みをたたえた男が立っていた。二十代後半といったところか。新手のナンパかと思ったが、手に持っている“何か”が気になり、首を傾げながら相手の言葉を待った。

「ほら、さっきあそこの植え込みにこの紙容器を捨てたでしょ」

「それがどうしたの? 拾ったならあげるよ」

あたしはイラついて男を睨みながら言う。

「ああ、そうなんだ? もったいないなあ。せっかく若くて美人だったのに」

やっぱり新手のナンパかとあたしは思った。

「で? どうせならあんたが捨ててくれればいいのに。じゃ、忙しいからこれで」

と言い放ち、その場をあとにしようとした瞬間、たちまち男があたしの前に来て言った。

「この鏡を観てごらん。これが今の君だよ。さっき君はポイ捨てした時に、羞恥心といっしょに君の若さと魅力も捨てちゃったのさ。実にもったいない」

鏡の中には醜い老婆がいた。
ファンタジー
公開:20/07/01 18:42
363 残念な人っているよね 誰が見てるかわからない 天網恢恢疎にして漏らさず オオカミの自信作

武蔵の国のオオカミ( ここ、ツイッタランド、タイッツー )

武蔵の国の辺境に棲息する“ひとでなし”のオオカミです。

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