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私の祖母は代筆屋をやっていた。
昔は本人の代わりに筆を執る代筆屋もそれなりの需要があったが、パソコンが主流となってしまった現代ではその仕事を知る人も少なくなってきた。
それでも私は祖母の跡を継ぎ、代筆屋を営んでいる。
お得意様からの依頼を受け、細々と食いつないでいく日々。
そんな私のもとにここ最近、妙な仕事が舞い込んでくるようになってきた。
「遺言書を見てくれないか?」
そう言われ、依頼人の家を訪れる。
見せられた遺言書は直筆で、とても温かみがあるように感じた。
書に耳を当てる。書いた人の気持ちが聞こえてくる。
私は遺言書から聞こえた声を遺族の方々に伝えた。
ともすれば空言とも言われかねない私の言葉を、皆さん真摯に聞いてくれている。
「空耳だと疑わないんですか?」
そう聞くと、皆が口を揃えてこう言ってくれる。
「爺様の為人はよく分かっている。あの人の最後の言葉を伝えてくれて、ありがとう」
公開:20/07/01 18:42

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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