睡眠代理人

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「今日もよく仕事したな」
僕は目を覚まして、ベッドから起き上がった。時計は午後4時を指している。
 僕は睡眠代理人のバイトをしている。脳をネットに接続することで、他人の代わりに睡眠をする仕事だ。今日は8時間は他人の分の睡眠をしただろうか。

 バイトを始めてから知ったのだが、睡眠を代理していると、一緒に夢を見ることも代理する。バイト中、僕は多くの人の睡眠を代理し、そして同じ数の夢を見た。

 夢の中で、ボクは自由に空を飛んで、わしは先立たれた妻と再会し、俺は夢に見た幻のカツ丼に涎を垂らし、私は初恋の彼と結ばれていた。

 ずっと誰かの夢を見ていたかった。僕はバイトの時間を更に増やした。他人の夢を見る時間が増え、自分でいる時間が減っていく。遠からず、僕は一日中他人の夢だけを見て暮らすようになるだろう。そうなったなら、それでいいと思う。だって僕は、ボクで、わしで、俺で、私で、みんななんだから。
ファンタジー
公開:20/07/01 18:36
更新:20/07/02 14:21

森下慎吾

文章を書くのは楽しいけど、難しい!
読んだ人が楽しんでもらえるよう、がんばります。

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