白地図の猫-5

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猫チョウが本物の猫になった。
頭がこんがらがって、どこから驚けばいいか分からない。チョウが猫になったのか、元々猫だったのか、分からないけどそいつは猫だった。顔だけじゃなく全身猫で、羽も触覚もはえてなかった。
ポケットからスマホが落ちた。黒猫はぴんと耳を立てて、猫背をもっと丸めて、転がったスマホのにおいをかいだ。しっぽがハテナになる。
「か、返せよ……!」
スマホを取り返した。今度は引っかかれずに済んだ。見上げる目はチョウの羽の色。バターなのは、フンより羽の方だと思った。
「なぁ。なんで連れて来たの?」
答えずに、猫はくるんとお尻を向けた。僕の手をしっぽがなでた。

――アキトに見せたかったんだ。
ハル君の声に聞こえた。
しっぽがバイバイみたいに振れた。
「……待って!」
トンと足が空をふんで、宙返りでチョウに戻った。



目が覚めた。
僕は自分の部屋で寝てた。
遠くに電話の音が聞こえた。
ファンタジー
公開:20/07/01 16:22

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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