白地図の猫-10(完)

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――元気になって、直接言いたかった。宝物見つけたって、二人で見ようって言いたかった。きっと言えるって、俺が思ってたかったから。
首を振った。もっと見えなくなるのに振った。『言いたかった』『見せたかった』『思ってたかった』全部昔の事みたいだった。バイバイのしっぽみたいだった。
――チョウの羽は、たましいを運ぶんだって。コハルにたのんで、一緒に乗せてもらったんだ。どうしてもアキトに見せたくて。
バター色の羽も、黒い毛皮もとけて、大きな地図に浮かぶ島になった。袖でぐしぐし目をぬぐった。ぬぐう度、地図ははしからチョウになって、空へひらひら飛んで行った。
「見れたよ!」
それしか言えなかった。
「宝物はあったよ!……いつか絶対、もう一回二人で見よう!」
最後は『にゃうん』にも「うん」にも聞こえた。
チョウの群れが空に道を作った。僕は全力で手を振った。
羽を広げた猫チョウが、チョウの道を渡って行った。
ファンタジー
公開:20/07/02 17:56

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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