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「世界が法則なんじゃない。法則が世界を作っているのさ。」
彼はそう言って、一粒の薬を手渡してきた。
「これを飲むことによって君の奥深くにある「あたりまえ」を壊すことができる。さあ、飲みたまえ。」
私は飲んだ。すると、頭の螺子が頭蓋の穴に落ちる音がした。視界はぐるりと回り、彼の笑顔も同時に回った。
気がつくと、私は空に落ちていた。その世界は終わりを迎える最中だった。私はそのまま宇宙まで落ち、全身を沸騰させて死んでしまった。
気がつくと、昨日だった。私は彼といつものように話していた。彼の微笑はまるで明日の笑顔のようだった。その事実は、私を憔悴させるのに十分だった。
気がつくと、太陽にいた。月に潜っていた。地球そのものだった。…
そうしてやっと、今日に戻った。「どうだい?感想は。」私は言った。
「すまない、もう一粒くれないか。」
彼はまた、いつもの笑みを浮かべた。
公開:20/07/02 14:51

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