白地図の猫-8

0
1

家に帰って、着替えもそこそこに探した。
「あぁその子ね、ハルのきょうだいなの」
どこからどこまで夢だったか分からない。でも、猫チョウはいたんだ。
「名前はコハル。ハルが生まれた年うちに来て、一緒に大きくなって。双子のきょうだいだって、ハルがいつも言ってた」
僕はコハルに会った。コハルがあの庭に連れてってくれた。だからハル君も庭にいる。
学校の校庭、通学路の原っぱ、公園の花だん、チョウが飛んでそうな所を片っぱしから回る。まだ行ってない道、知らない家、見た事ない場所、あの庭につながる秘密の道が、探せばきっとある。
「先月の初め、ハルよりちょっと先に。……ハルには言えなかったけど。向こうで待っててくれて、また一緒に遊んでると思うわ」
向こうじゃない。だって僕は見たんだ。一回行けたんだから、きっともう一回行ける。

――アキトに見せたかったんだ。
ちゃんと見れたよハル君。だから、次は二人で見よう。
ファンタジー
公開:20/07/02 13:57
更新:20/07/02 15:07

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容