食物連鎖

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古い紙の束が発見されたと、考古学者たちがテレビ画面から放出された光の中で興奮している。どうやら子供が学びに使用していた教科書というものらしい。一人がページをめくり眉をしかめると、視聴しているであろう僕たちに向け、三百六十度回転する。見えたのは色分けされた三角形の図だった。
「この『食物連鎖』とは一体何の事でしょう?」
地球上で自由に動き回れるのは私たち人間しかいない。食物は唯一ある『白い実』だけだ。
「さあ、何の事だかさっぱり…」
数人の考古学者が頭を悩ませているのを眺めながら、僕は朝食の白い実をかじる。
ガリッ!と骨の砕けたような音が頭蓋骨に響く。食べ頃を過ぎた白い実は石のように硬くなって歯を欠けさせる。欠けた歯は必ず白い実のなる木の根元に植えるのが決まりだった。
欠けた歯を埋めながら、食物連鎖などという不気味なものが存在する時代に生まれなくてよかったと、僕は強く感謝している。
その他
公開:20/07/02 10:01

森川 雨

ショートショートには不向きな書き方かもしれませんが、こちらで修行させていただきたくお邪魔しました。

よろしくお願いします。

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