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高齢で認知症と脳梗塞を患った祖母はまともに話す事も食事をとる事もできず、点滴をうちながら最期の時を待っていた。
「お義母さんの事だから『寝たきり老人になってまで生きたくないわ』て言うと思う。つらい思いはさせたくないの」と母は言った。

戦時中、そして戦後の日本をしたたかに生き抜いた祖母は、人に情けない姿を見せるのが嫌いだった。

延命せず、安らかに旅立たせてあげるのがいいのかもしれない。

祖母の介護は、他界した父に代わり母が一手に引き受けていた。
嫁と姑。
介護では何かと揉める事も多かったようだが、もう母も根にもっていないそうだ。終わりよければ全てよし。

病院から帰宅し、祖母の部屋を整理していると、祖母が大切にしていた碁盤と碁笥が出てきた。
昔、よく祖母と遊んだものである。
碁笥を開けると、古びた碁石に埋もれて小さなメモ用紙が入っていた。
「たすけてイジメをウケテイマス」
ホラー
公開:20/06/30 16:28
更新:20/06/30 17:07

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