雪景色

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「いらっしゃいませ」
「あ、あの探し物があるんですが…ある風景を探していて」
僕は、ぎこちなく唐突に用向きを店の主人に切りだした。
「あの店ならならきっとあるはず」と宿の女主人が教えてくれたのだ。
「どんな…風景でしょうか」やや訝しげに、主人。
「世界で一番美しい雪景色を探しています。それは僕の大事な人が見たというまさのそのものでないといけないんです」一気にうわずった声で僕。
「…ございますよ」異常な探し物に、平然と笑みを浮かべて返答する主人。

「こちらでございます」
アンティークな店の奥に眼が並ぶ。義眼か?いや違う?こちらを見つめてる。
「この銀色のをお手にとってご覧ください」
ああ、10年間探し求めていた風景だ。この眼に写っていたのだ。人の眼球は風景を蓄えることができると知ってから、北の山で遭難した婚約者が最後に見た景色を探した。
「今そこに行くよ」僕は銀色の眼を掌に包み込んだ。
ファンタジー
公開:20/06/30 15:37

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