浮遊のカラス

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舗道が早朝から濡れている。雨が降ったらしい。カラスが路上に降りては飛び上がり、また降りては飛び立つ。
みかけない大きな円筒形のゴミ箱が口を開けて立っている。なかには空き缶、ペットボトル、チラシ、雑誌、包装フィルムなど。
ゴミ箱が暗い。何気なく首を突っ込んで覗いた。音もなくゴミが徐々に沈んでゆく。底に吸われてゆく感じだ。いつのまにかゴミ箱の口が広がって、胸から腹までゴミ箱にのめり込む姿勢になる。雑多なゴミが深くまで吸われている。空気の流れを感じた。声を出すまもなく身体ごとゴミ箱に強く引かれ、ゴミ箱に吸い込まれてしまった。
なかは全くの闇。方向感覚がない。地中に垂直に沈むようでもあり、見えない配管のなかを水平に滑っていく感じでもある。そのうち身体が少し安定した。浮遊感。闇に漂っている。思わず声をあげた。
「おーい!」
しばらくすると深い闇の底から濡れた声がひびいてきた。カラスの啼く声である。
その他
公開:20/06/30 06:51

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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