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へいの向こうは花畑だった。
アリスの国に迷い込んだ気がした。白うさぎじゃなくて、チェシャもどきの猫チョウを追っ掛けて、僕はハートの女王の庭に来ちゃったのかな。赤や白のバラが咲いて、噴水があって、トランプみたいなレンガの道が続いてて。
お城はなかった。家の建ってたあとが四角く残って、その上にツタや雑草がはえて、もう何年も空き地みたいだった。
チョウがいっぱい飛んでる。花畑に重なったチョウ畑。――あぁそっか、チョウの宝物だもんね。一生けんめい追っ掛けてたのがおかしくなった。まぁいいや、ハル君に見せたげよう。宝物はちゃんとあったよって。
それとも、ハル君は知ってたのかな。地図の話の時も笑ってた。もしかして、僕に見せてくれる気だったのかな。
「俺、来月引っ越すんだ」
笑った顔のまま言った。ハル君はあの時、ほんとはどう思ってた?
「にゃ~ぅ」
「なぁお前、」
見下ろした足元に、黒い毛皮が座ってた。
アリスの国に迷い込んだ気がした。白うさぎじゃなくて、チェシャもどきの猫チョウを追っ掛けて、僕はハートの女王の庭に来ちゃったのかな。赤や白のバラが咲いて、噴水があって、トランプみたいなレンガの道が続いてて。
お城はなかった。家の建ってたあとが四角く残って、その上にツタや雑草がはえて、もう何年も空き地みたいだった。
チョウがいっぱい飛んでる。花畑に重なったチョウ畑。――あぁそっか、チョウの宝物だもんね。一生けんめい追っ掛けてたのがおかしくなった。まぁいいや、ハル君に見せたげよう。宝物はちゃんとあったよって。
それとも、ハル君は知ってたのかな。地図の話の時も笑ってた。もしかして、僕に見せてくれる気だったのかな。
「俺、来月引っ越すんだ」
笑った顔のまま言った。ハル君はあの時、ほんとはどう思ってた?
「にゃ~ぅ」
「なぁお前、」
見下ろした足元に、黒い毛皮が座ってた。
ファンタジー
公開:20/07/01 14:24
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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