続・夜空の飛行

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喉の奥から軋むような声がこぼれ出る。満たされた腹の奥では、まだ命が揺らいでいる。
喉の調子が悪いのは本当だ。もう澄んだ声で鳴けず途方に暮れていた鳥に、声をかけてきた魚がいたのは好都合だった。鳴けなくなっても獲物はとれる。その事実が励ましてくれると思ったが虚しさが増しただけだった。
花のように、誰の命も奪わずに生きていく事ができたらと夜明け前に飛び立つと、岩場の隙間から一輪の花が鳥に笑いかけていた。
「私の種をお食べなさい。誰の命も奪わずに生きていけます」
鳥は花の言葉に引き寄せられ、真っ逆さまにくちばしを向け急降下した。と、気づいたときにはそこに花なんて咲いてはいなかった。鳥のくちばしは岩場の隙間に刺さり抜けなくなっていた。
鳥はもう鳴く事ができなくなった。けれど誰の命も奪わなくてすむ事に安堵すると、静かに羽を下ろして瞼を閉じた。
空からは満月が、一輪の花のように眠る鳥を黙って眺めていた。
ファンタジー
公開:20/07/01 13:50

森川 雨

ショートショートには不向きな書き方かもしれませんが、こちらで修行させていただきたくお邪魔しました。

よろしくお願いします。

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