夜空の飛行

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「ああ、僕も夜空を飛んでみたいなあ」
「あんた、どうして私たちが空を飛ばないか考えたことがあるかい。ここの方が安全だからだよ。ましてや夜空なんて、ただの闇じゃないか」
「だって太陽は目が焼けるようだもの。それに見てよ、あの鳥。僕の事じっと見てる。僕に空飛ぶ素質があるって見抜いてるんだよ」
「そりゃ、あんたがじっと見てるからさ。自惚れもほどほどにしないと痛い間に合うよ」
「僕、飛び方を聞いてみる」
「あっ、やめときな!」
「ねえ、鳥さん。僕に空の飛び方を教えてくれませんか?」
「いいとも。ただ喉の調子が悪くてね。もう少し近くに来てくれるかい?」
「はい」
僕は嬉しさのあまり水面から顔を出した。鮮明だった景色が急にぼやけ頭がくらりとする。が、次の瞬間、僕は空を飛んでいた。跳ねた尾から舞う飛沫が星のように煌く。
…ああ、やっぱり夜空は美しい…
と思う間に、視界は夜空よりも深い闇に包まれていった。
ファンタジー
公開:20/07/01 10:42
更新:20/07/01 22:12

森川 雨

ショートショートには不向きな書き方かもしれませんが、こちらで修行させていただきたくお邪魔しました。

よろしくお願いします。

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