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猫。だよね、どう見ても。
スマホを握ったまま、しばらく固まってた。
チョウの羽に黒猫の顔――模様じゃなくて本物だ。二つの耳は機嫌悪そうに伏せて、きらきら光る目が僕をにらんでる。
羽がまたフゥッ!てうなる。思わず一歩下がった。スマホごと手をポケットに隠す。羽のふちはギザギザとがって、まるで牙か爪だ。引っかかれた指がひりひりした。
開いてた羽が、あくびするみたいに閉じた。
「にゃ~おぅ~」
馬鹿にした感じの声。そう言えばこいつ、チェシャ猫の顔そっくりだ。ムカッときたけど、引っかかれるのは嫌だから、僕も手は出さず、羽の向こうの顔をにらみつけた。
猫チョウは足でうーんと伸びをすると、花の先っぽをひょいと飛び降りて、くるんと葉っぱにぶら下がった。顔だけのくせに動きが猫だ。触覚がひげみたいに跳ねた。
よぅし、こいつのチョウドウを最後まで追っ掛けて、宝物をあばいてやる!
ポケットのスマホを握り直した。
スマホを握ったまま、しばらく固まってた。
チョウの羽に黒猫の顔――模様じゃなくて本物だ。二つの耳は機嫌悪そうに伏せて、きらきら光る目が僕をにらんでる。
羽がまたフゥッ!てうなる。思わず一歩下がった。スマホごと手をポケットに隠す。羽のふちはギザギザとがって、まるで牙か爪だ。引っかかれた指がひりひりした。
開いてた羽が、あくびするみたいに閉じた。
「にゃ~おぅ~」
馬鹿にした感じの声。そう言えばこいつ、チェシャ猫の顔そっくりだ。ムカッときたけど、引っかかれるのは嫌だから、僕も手は出さず、羽の向こうの顔をにらみつけた。
猫チョウは足でうーんと伸びをすると、花の先っぽをひょいと飛び降りて、くるんと葉っぱにぶら下がった。顔だけのくせに動きが猫だ。触覚がひげみたいに跳ねた。
よぅし、こいつのチョウドウを最後まで追っ掛けて、宝物をあばいてやる!
ポケットのスマホを握り直した。
ファンタジー
公開:20/06/30 23:53
更新:20/07/02 18:59
更新:20/07/02 18:59
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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