世界を止めて

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少年は困っていた。ここ数日、少女がご機嫌斜めだからだ。
理由はわかっていた。彼女が贔屓にしている地元球団が連敗中だからだ。このままではBクラス以下は確定だろう。
少年は考えた。どうすれば、この球団を優勝させられるかを。調べてみると、夏場にライバル達が調子を落とす中、この球団だけが勝率を上げている事がわかった。現に夏休みに入ると、少女の機嫌も治った。このまま好調を維持してれば優勝も夢ではないのだが…。
少年は神に祈った。世界を夏のまま止めてほしいと…。

二人は球場で天王山の行方を見守っていた。が、結果はサヨナラ負け。今季も優勝を見届ける事は出来なかった。
十月の夜空の下、夏服の二人は肩を寄せ合い泣いた。

その日、球場の隣にある式場で、新郎は新婦のお腹を優しく撫でて言った。
「僕らが見届けられなくても、きっと…」
入道雲が広がる三月の空の下、プレイボールの声と共に沸いた歓声が二人を包んだ。
ファンタジー
公開:20/06/29 13:37
更新:20/06/29 17:48

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